寿歌

『寿歌』って知る人ぞ知る、、の脚本。80年代に北村想岸田戯曲賞を受賞した作品。私は、北村想の劇団が大阪公演に来た時に、阪急ファイブの上の劇場(なつかし〜!)で見た。お友達と並んで、一番前で見たんだけど、すごい脚本に圧倒された。
その後、加藤健一事務所が何度も公演していて、それはテレビで見た。さすが、加藤健一はうまかったなあ。細かいところはすっかり忘れてたけれど、終末感の漂うあの脚本の独特の魅力が大好きで、いろんな芝居を見た私にとってもあの脚本って一番好きな脚本かも、、と思う思い出の作品だった。
そんな作品を、今年の初め、堤真一戸田恵梨香橋本じゅんが久々に舞台化するってニュースを聞き、なんとしても見に行きたかった。でも、このキャストで劇場は小さいし、チケット買えるわけないよね。予約日、時間通りにネットにアクセスしても何度アクセスしてもつながらず。一瞬つながっても、購入まで進めない、、という状況で、あっという間に売り切れちゃってチケットは買えなかった。
そんな、どうしても見たかった『寿歌』の公演をwowowが放送してくれたので、もちろん録画して見た。久々に見た『寿歌』。やっぱりすごく良かったな。

“核戦争ですべてが廃墟と化した街に、リヤカーを引いた旅芸人のゲサクとキョウコがやって来る・・・。
二人の頭上には、まばゆい光を放ちながら核ミサイルが飛び交い、追いかけてくる低い破裂音が世界の終わりを告げていく・・・。
そこに、どこからともなく、不思議な芸をあやつるナゾの男・ヤスオが現れた。
出会った三人は、あれやこれやの"エエカゲン"な会話を繰り広げながら、焼き尽くされた滅びの荒野を共に旅することになるのだが・・・・。”

放射能の灰がハラハラと雪のように舞い落ちてくる、、という情景。「きれいやなあ、、。」って、ちょっと間の抜けたキョウコの台詞。なぜか関西弁の芸人、ゲサクとキョウコ。その関西弁が、堤真一戸田恵梨香という関西ネイティブの二人だからめちゃナチュラル。終末の悲壮な世界のはずなのに、この二人の関西弁のやりとりが、なんともいえないおかしさを醸し出していて。戸田恵梨香、よくこれだけの難しい役に挑んだなあ。それだけでもすごいと思う。
もしかして、ゲサクもキョウコも、すでに死んでいて、世界の人類もみんな死に絶えていて、ただ幻のように魂がこの世をさまよっているだけなのかも、、とも思えるこのストーリー。なんとも哀しく、面白い。私、やっぱりこの脚本大好きだ。この脚本が生まれたのが79年。80年代によく上演された。80年代だからこそ、この暗い終末期の世界を、なんとなく明るく軽く描けたのかもしれないなあ、、なんて思ったりもする。
それにしても、やっぱり堤真一はうまいね。舞台でこれだけできるんだからすごいな。あ〜あ。生で見たかったなあ、、。でもwowowで見れただけでもありがたいけど。