英国一家、日本を食べる

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

銀座の教文館に平積みで置かれていたこの本。なんか装丁が気になって手に取ってみたら、これは、なんて私にぴったりな本なの!これ絶対面白いでしょ〜!!って一目惚れして買ってきた本。予想に違わずとっても面白くて、ついつい腹を抱えて笑っちゃった。本を読みながら、つい声を出して笑っちゃったり、突っ込み入れてたりして、旦那にちょっと気味悪がられた。でも、本当にそのくらいすごく面白いの、この本。
本の内容はこんな感じ。(出版社のHPより)

イギリスの「食いしん坊(グルマン)」が服部幸應、辻芳樹から饗されたご馳走とは?
デパ地下の夕張メロン、思い出横丁の焼きそば、相撲部屋のちゃんこ、道頓堀のお好み焼き、札幌ラーメン、博多ラーメン、京都の鯖鮨、那覇の紅芋アイス、鯨の刺身、生タラバ……。日本の食の現場を「食いしん坊」と「ジャーナリスト」の眼で探し、見つめ、食べまくったイギリス人による異色の食紀行!

イギリス人フードジャーナリストが、ル・コルドンブルーで一緒に修行した日本人の友人トシにもらった、辻静雄著の本をきっかけに日本料理に興味を持ち、家族4人で日本にやってきて、3ヶ月間北海道から沖縄まで、いろんな日本食を食べまくるという話。食に造詣の深い著者の、新鮮な視点もすごく面白いし、それ以上に子供達の素直な感想がもっと面白い。文章もウィットに富んでいて、クスクス笑いながら読める。
京都の“菊の井”に行くシーンもすごく印象的だった。その部分を読んでいて、フランスの星付きレストランに行ってすごく緊張しちゃった自分の事を思い出したりした。自分の恥ずかしかった出来事を思い出しちゃったのは、このシーン。

凝ったつくりの広い木造の建物に着くと、オーストラリア人の女性が、店の雰囲気に呑まれてしまったからか、案内の人が靴を脱いでくださいと言ったのを誤解して、ひざまずいてなかに入ろうとした。それを見た店の人は大慌てで彼女に近寄り、手を貸して立ち上がらせようとした。ひとつ間違えば自分がこうなっていたと、僕はひそかに思った。懐石といえば、儀式張っていて作法にうるさいという恐ろしいイメージが強く、きっと僕も食事が終わるまでには何かやらかすに違いないという気がした。

そっか、外国人もやっぱり日本の懐石料理の名店の雰囲気にはちょっとびびって思わぬ失敗をしちゃうのね〜。私がびびって失敗しちゃったのは、フランスのコルマールにある、有名な星付きレストランに行った時のこと。高級レストランに食事に行くっていうので少々びびっていた。そして、食前酒を何にするか尋ねられた時に、とっさに昔どこかの雑誌で読んだ情報が頭をよぎっちゃったのよね。“高級レストランでの食前酒に何を注文するかは大事なこと。女性は、間違ってもパスティスのようなお酒を注文しちゃいけない。”などなど。食前酒、何しよう??と緊張しつつ迷っちゃった。旦那はドライシェリーを注文したんだけど、同じじゃつまんないし、、ま、キールなら間違いない?と思って、キールを注文した。そしたら、“avec Vin Blanc? ou Shampagne?”と聞かれ、え?だからキールって言ってるやん?とフリーズしてしまった私。今思うとめちゃ恥ずかしい。そもそも前置詞のavecを聞き損なってるし。キールを作るのに、白ワインでするかシャンパンで作るかどっち?って聞かれてるのに。慣れないキールなんか頼むからよね。高級なお店だと思って緊張してると、思わぬところでぼろが出るのよね。そこのお店、イギリス人らしい観光客のご夫妻が、嬉しそうに記念写真を撮ってたりして、“そうよね。こうやってリラックスして雰囲気を楽しめば良いのよね”と、だんだん緊張も解けて、美味しい食事を楽しめたし、とても良い思い出になったけど。今でもキールを見ると、その時の恥ずかしい思い出がよみがえっちゃう。
著者が大阪を訪れてるくだりもすごく愉快。彼はお好み焼きも串カツもおおいに気に入って、“次に世界を席巻する日本食お好み焼きじゃないか?”なんて言ってたりして。このあたりは、大阪人としてはちょっとうれしかったりする。
英国一家、日本を食べる』は、自分たちの食文化を、新鮮な視点で再発見できる楽しい本。食いしん坊さんも、そうじゃない人もきっと楽しく読めると思うので、とってもおすすめ。本屋さんで見つけたら、是非一度立ち読みしてみてください。