無実はさいなむ

無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

今CSで再放送中の、ミスマープルの第三シリーズの中の一作、“無実はさいなむ”は、本当にすごく面白い。確か原作も読んだ気がするんだけど、このドラマ化作品もすばらしい。もともとはミスマープルの出てこない作品をアレンジして、ミスマープル物にしたんだけど、それも無理なくドラマ化できているし、こうやってドラマとして紹介してくれて気軽に映像を楽しめるのもいいな。“無実はさいなむ”というタイトル。原題の“Ordeal by Innocence”を“無実はさいなむ”と訳した翻訳者のセンスも素晴らしいなあ、、ってしみじみ思う。
ネタバレになっちゃうといけないので、amazon紹介ページからほんのさわりのあらすじだけ紹介。

慈善家の老婦人が殺され、評判の悪い養子のジャッコが逮捕された。彼はアリバイを主張したものの有罪となり、獄中で死んだ。それから二年後、外国から帰ってきた男が、ジャッコの冤罪を告げに遺族の住む屋敷を訪れた。が、その来訪は遺族にとって迷惑だった。落着したはずの事件が蒸し返されることになったのだ。

“逮捕されて獄中で亡くなった容疑者が、実は無実だった”という事実。それをもたらされた時に、事件の当事者たちが戸惑ってしまう、、という心理描写がすごくリアルだった。私が思い出したのは、名張ぶどう酒事件。あれも、冤罪ではないか?と言われて、ずっと再審請求が続けられているけど、あの事件に居合わせた他の住民たちの戸惑った様子をドキュメンタリー番組で見たことがある。住民は、「もし逮捕された容疑者が犯人ではないとしたら、他の住民の誰かが犯人ということになるよね、、。それは困る。」と話していた事が、思い出された。まさに、無実はさいなむ、、という状況。
クリスティ作品の方は、その後まだまだ波乱があるんだけど。とにかく、人間の心情を細かく描いてくれていて、何度読んでも、何回映像化作品を見ても、そのたびに楽しめるなあ、、ってしみじみ思う。この“無実はさいなむ”の中には、私がとっても気に入ってるキャラがいて、その人を見てるのもちょっと楽しい。動物を研究してる学者さんドクターキャルガリ。こういういかにも学者タイプの人、いるよなあ、、って笑える。でも、つらいストーリーの中で、この人がいてくれる事はちょっとだけ救いになってる感じ。
ミス・マープルは、今ちょうどイギリスで次のシリーズを放映したばかりらしくて、またNHKでの放送が楽しみ。ミス・マープルを見ていて、将来私もこんなおばあちゃんになれたらいいなあってすごく思う。でも、あんなに頭も良くなければ洞察力もないから無理だなあ。せめてあのファッションだけでも、密かに目指したいな。