コリーニ事件

コリーニ事件

コリーニ事件

ドイツが舞台の法廷ミステリー『コリーニ事件』を読んだ。読み出したらとまらなくて、またまた電車を乗り越しそうになってしまった。あらすじはこんな感じ。

新米弁護士のライネンは大金持ちの実業家を殺した男の国選弁護人を買ってでた。だが、被疑者はどうしても動機を話そうとしない。さらにライネンは被害者が少年時代の親友の祖父だと知る。──公職と私情の狭間で苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。犯人を凶行に駆り立てた秘めた想い。そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。刑事事件弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く圧巻の法廷劇。

ドイツの裁判ってこんな感じなのかな、といろいろ興味深く読み始めたんだけれど。後半、真相がわかってからは息を呑むような展開で。そうかあ、、そうだったのか、と。ず〜んと心に重く響いた。
最後の方の、被告が弁護士ライネンに言った言葉がとても重かった。
「うまくいえないんだけどね、ライネンさん。おれたちが勝つことはない。それだけはいっておきたい。おれの国に、死者は復讐を望まない。望むのは生者だけ、という言葉がある。このところ毎日、収監房のなかでそのことを考えているんだ。」
それでも、人の憎しみや恨みって、そう簡単には消えないものなんだなあ、、と。いろいろ考えさせられてしまった。過去を直視するというのはとても辛いことなのだけれど。
作者のフェルディナント・フォン・シーラッハは弁護士という事もあり、法廷の描き方がしっかりしている。そして、彼自身の生い立ちもまた、この作品に重みを加えているんだな、、と訳者後書きを読んで思った。文章も読みやすいし、おすすめ。