ゴールドスティン

ゴールドスティン 上 (創元推理文庫)

ゴールドスティン 上 (創元推理文庫)

大好きな、フォルカー・クッチャーのゲレオン・ラート警部シリーズ第三弾!上下巻を読了。いや〜。やっぱりこのシリーズは最高に面白いわ。あらすじはこんな感じ(訳者あとがきより)。

ひとりのユダヤ人殺し屋がニューヨークからベルリンへやってくる。名前はゴールドスティン。時は一九三一年。
名うての殺し屋がやってきたという情報が一人歩きするベルリン。暗黒街では疑心暗鬼が渦巻き、ベルリン警視庁も対応に追われることになる。しかもこの殺し屋に濡れ衣を着せて、日頃の鬱憤を晴らそうとする怪しげな秘密組織まであらわれる。こんな騒動の中で奔走するのが、ベルリン刑事警察の警部ゲレオン・ラートだ。
ゴールドスティンを二十四時間監視するよう命じられたラート警部と、それを嫌って行方をくらまそうとする殺し屋。ふたりの追いかけっこと騙し合いの中であぶり出されるのが、当時のベルリンのユダヤ人社会だ。

主人公ゲレオン・ラートの視点だけでなく、恋人チャーリーの視点、KaDeWeなどの百貨店荒しをしてる少女アレックスの視点、追われる殺し屋の視点、他にも、いろんな登場人物の視点、語り口で語られる章がどんどん出てきて、ちょっと複雑なんだけど、ひとつの物語をたくさんの視点で見ていくことによって、多層的に描かれてるところもすごく面白い。チャーリーの追っていることと、ラートの追っている事件が最終的につながってくるところも。なるほど、そうきたか、、って感じで。
この本の一般人のレビュー見てると、主人公が好きになれないとか共感できないって思う人も結構いるみたいだな。確かに。日本人的感覚から言うと、かなりラートって踏み外してる刑事なんだよね。正義感もそこまで強くないっていうか。でも、刑事として大事なところとか、人間として大事なところはちゃんとしてると思うんだけどね。私はラートが大好きだし、とっても魅力的な刑事だと思う。相棒の右京さんとは全然違うけど。
フォルカー・クッチャーのラートシリーズは、第二次世界大戦前のベルリンが舞台なんだけど、一作目、二作目、三作目と1年ごとに時が進んでいて、今回は1931年が舞台。だんだんナチスの勢力が強まってきてて、ユダヤ人に対する嫌がらせもだんだんエスカレートしてきてる。1928年5月のドイツ国会選挙ではわずか12議席だったナチ党が1930年9月の国会選挙で107議席を獲得して第二党に躍進した。ナチ党の推定党員数も1929年には約18万人だったのが、翌年末には約39万人、そしてこのゴールドスティンが描いている1931年末には80万人を越え倍々の急成長を遂げている。そんな時代の空気感がこの小説の中に描かれていて、それも印象深かった。
前作に続き、今作も私は電子書籍で読んだんだけど、やっぱり電子書籍は便利だし読みやすいわ。老眼の目にはかなり文庫本も辛くなってきてるけど、それに比べて電子書籍は本当に読みやすい。これからも、なるべく電子書籍のあるものは電子書籍で読みたいなあ、ってつくづく思う今日この頃だ。
それと、訳者あとがきに、もうひとつとっておき情報があった。なんと、このゲレオン・ラートシリーズが“バビロンベルリン”というタイトルでテレビドラマ化されるらしく。2015年半ばより製作開始だって。いつかCSでやってくれるかな。是非是非見てみたい〜。楽しみ。
Tom Tykwer entwickelt "Babylon Berlin" für ARD und Sky - derStandard.at