愛の裏側は闇

愛の裏側は闇(3)

愛の裏側は闇(3)

とうとう最後、三巻まで読了して、この長い大河小説を読み切った。三巻に入ってからは、先の展開が気になって気になって、ページをめくる手ももどかしいくらい、夢中になって読めた。でも、最後の最後はこの物語がとうとう終わってしまうのがなんだか寂しいような、まだまだ続きが読みたいような、そんな気分だった。
主人公ファリードの、まっすぐで誠実で優しい、でも芯の通った強い人柄がとても魅力的だった。でも、彼一人じゃどうしようもなかったんだよね。彼もまわりの人を助けてきたけど、それ以上に、彼は本当にまわりの人に助けられた。家族にも、友人にも。母は、まさに惜しみない愛をファリードに注いで、何度も彼の窮地を救ったし。父とは、どこか父子関係がぎくしゃくしていたのに、最後、ファリードが収監され拷問を受けているのを知って、何もかも捨てても彼を救おうと奔走して。そんな両親の姿に感動した。
最後、どうにかハッピーエンド(完全ハッピーとは言えないかもしれないけど)になってくれてホッとしたよ。さんざん家族や夫に苦しめられたリナが、最後に夫にした仕返しはちょっと痛快だったしね。ファリードとリナはきっとこの後幸せになったものと思う。
1巻を読み始めた時には、話があちこち飛ぶし、登場人物多すぎるし、人の名前複雑だし、結構読み進めるのが大変だったけど、それでもこの波瀾万丈の物語にどんどん引き込まれた。そして、最初に出てきた謎の殺人事件は、三巻の最後でしっかりつながった。なるほど、殺されていたのはあの人で、謎のメッセージはそういう意味だったのか、、と。すべてつながった。
この話の舞台になったシリア、ダマスカスの街の様子をあれこれ思い描いて、すごく行ってみたいなあ、、って思ったけど。今はとてもそんな状態じゃないよね。この物語が描かれた時代、主に1960年代のストーリーが中心だったんだけど、本当に何度もクーデターが起こってころころ政権が変わったシリア。だから、みんな政治体制がそんなに長く続くものとは信じてなくて。国や政治体制より、部族のつながりを一番大事に思ってるところがなんとなく印象的だった。バアス党っていうのは、イラクのイメージが強かったんだけど、実はシリアにもあったんだな、、とか。ムスリム同胞団共産主義者ってのはめちゃめちゃ仲が悪かったのか、、とか。そもそも、シリアやヨルダン、レバノンにそんなにキリスト教徒がいたとは知らなかったし。この本を読んで、いろいろ知らなかった事をたくさん知ることができた。あんまりアラブが舞台の小説を読んだことがなかったので、ものすごく新鮮だった。
それにしても、やっぱり読書は楽しい。本を読むだけで、知らない世界へ飛んで行って、好きに旅する事ができるんだから。こんなに安上がりで楽しい娯楽は他にないんじゃないかな、、なんてしみじみ思う。