禁忌

禁忌

禁忌

『犯罪』や『コリーニ事件』がとても面白かったので、引き続きシーラッハの作品を読んでみた。『禁忌』。しかし、これはなんとも難解な作品だったなあ。最後の最後、ページをめくったらもう終わりになって「え??つまりどういう事??」ともう1回最後の方を読み返してしまった。う〜む。やられた感。
でも、面白くなかったか?と言えば、全然そんな事なくて、すごく面白かった。主人公エッシュブルクは、こういう現代アーティスト、絶対ドイツにいそう!!と思うし。後半の法廷劇部分で大活躍の弁護士ビーグラーのキャラは最高だし。法廷ではすっごいキレキレの弁護士なのに、実生活ではちょっとどんくさいところがあって、そこらへんにけつまづいたり無駄に怪我したりして。休養のために、奥さんにすすめられて、リゾート地のホテルに行くんだけど、アウトドア派人間を毛嫌いしてて、ドイツ人が好きそうなハイキングを憎んでたり。なんかすごく面白いキャラ。彼の、法廷での刑事とのやりとりが結局一番私的には印象に残った。
シーラッハが、日本での出版にあたって特別に書いたあと書き「日本の読者のみなさんへ」を読んでちょっとだけ作者の意図らしきものは感じられた。彼は、良寛の俳句「うらを見せ おもてを見せて 散るもみぢ」を引用していた。悪の定義はそんなに簡単に決められるものではない、、という事なのかな。人間とは何か、罪とは何か、正義とは何か。答えはそんな簡単に見つからないものだよね。やっぱりシーラッハ、深いわ。