- 作者: ミシェルウエルベック,佐藤優,大塚桃
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: 単行本
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2022年フランスにイスラーム政権誕生。
シャルリー・エブドのテロ当日に発売された、
世界を揺るがす衝撃のベストセラー、日本上陸。読み終わって、呆然としながら、自分にこう言い聞かせなければならなかった。
「これは小説であって現実ではないんだ」と。
「こんなことは起こらない‥‥たぶん‥いや、もしかしたら」
──高橋源一郎(作家)シニカルな状況認識、政治的な無力感、そして人間の滑稽さに対する冷め切った視線。
ウエルベックはヨーロッパの未来も若者の力もなにも信じていない。
けれど、その残酷さこそが文学の力なのだ。
日本にはこんな作家はいない。 読むべし!
──東 浩紀(批評家)
読んでる途中、恐くて背筋が寒くなった。う〜ん、これって「絶対ない!こんな事あり得ない!」とは言えないよなあ。としみじみ。最後まで読み通してみると、すごく皮肉が効いた作品だなあという気もした。(以下ネタバレあり)
2022年のフランス大統領選挙。最終投票に残った二人の候補は、国民戦線とイスラーム同胞党。最初の投票での得票数が一番多かったのは、極右の国民戦線の候補者だったんだけど、決選投票では、「ファシストよりはマシかも」という事で、中道右派も社会党もみんなイスラーム同胞党を支持して、結果的にイスラーム政権が発足。
物語の主人公は、大学でフランス近代文学を教える教授で独身。自由だけれど孤独を感じている。彼が、一旦は教授を解任される(とはいえ、すごい金額の年金をもらえるので、生活は安泰なはず)んだけど、最終的にはイスラムに改宗して教授に再任される。
自由よりも服従の方が楽だよね、、っていうところがシニカルな感じで描かれてる。主人公が、学長になった同僚の、15歳妻を羨ましがってるところが、ちょっと正直すぎて笑えたよ。「あんたのポイントは結局そこでしょ!」とか思ってしまった。
自由や行き過ぎた個人主義、女性の社会進出が、ヨーロッパを衰退させてしまった、という議論。なんだか日本の右翼の人たちが喜びそうな論理だわ。家父長制の復活とか。イスラームの考えと、日本の右翼って、結構似通ってるなあ、、としみじみ。という事は、日本にだって、そういう政権が生まれてもおかしくないかも、、と思うとやはり背筋が寒くなる。そういう政権がもし生まれちゃったら、みんな「長いものには巻かれろ」式で、すっかり服従しちゃうだろうな。その服従っぷりはきっとフランスの比じゃないよ、、なんてね。想像しちゃった。いろいろ興味深い本だった。