左京区恋月橋渡ル

左京区恋月橋渡ル (小学館文庫)

左京区恋月橋渡ル (小学館文庫)

左京区桃栗坂上ル』と『左京区七夕通東入ル』の2冊を読んで、とっても楽しかった左京区シリーズ。もう1冊残っていた『左京区恋月橋渡ル』を読んでみた。あらすじはこんな感じ。

 毎朝六時半のラジオ体操ではじまり、「いただきます」の声を合図に、ほかほかの朝食が食堂のテーブルに並ぶ。京都の左京区学生寮で四年間なじんだ生活は、山根が大学院生になった春からもつづいている。寮には、生物学科の安藤や電気電子工学科の寺田、たまに顔を出す数学科の龍彦も含め、趣味と研究を偏愛しすぎるゆかいな仲間ばかり。山根も例外ではない。工業化学科でエネルギーを研究しつつも、花火をはじめ何かが燃える様子を見ているだけで気持ちがたかぶり、「爆薬担当」とからかわれるほどだ。当然、異性のことなんて頭の片隅にもなかったのだが――。
 糺の森を訪れたその日、突然の雷雨に浮かび上がる満開の山桜の向こうに、白いワンピースを着た女のひとがいた。ずぶ濡れになった山根は熱を出し、熱が下がってからもなにやら調子がおかしい。そして、龍彦のガールフレンドの花にたやすく言い当てられる。「山根くん、もしかして好きなひと、できた?」。花は言う、もう一度“姫"に会いたければ、下鴨神社に毎日参拝すべし――と。
 葵祭や五山送り火、京都ならではの風物を背景に、不器用な理系男子のみずみずしい恋のときめきを愛おしく描いた長編、初恋純情小説の決定版!

今回のストーリーは、工学部でエネルギーの研究をしている山根君が主人公。山根君が、下賀茂神社で出会った女性に一目惚れして恋に落ちちゃう話なんだけど、もうその不器用さ加減が面白くて。ついつい読んでて声出して笑っちゃったり、声出してツッコみたくなったり。遠い昔、学生時代のほのかな恋を思い出させてくれて、ちょっと胸がキュンとなる感じが、とても楽しめた。
で、やっぱり舞台が京都っていうのがすごく良くて。葵祭と、大文字送り火のシーンにはグッときた。最後の最後、締めくくりの大文字送り火のところで、なんだかついつい涙が出そうになっちゃった。良いなあ。初恋のこの甘酸っぱい感じ。
京都での学生時代。大文字送り火。色鮮やかな一つ一つの出来事を、自分の頭の中で再現して追体験する事ができた。そして、自分の思い出にも重ねてしまう。やっぱり、この左京区シリーズの作者、瀧羽麻子さんの作品。私、すごく好きだなあ。他のものも読んでみようかな、、って思った。