ビリー・リンの永遠の一日

ビリー・リンの永遠の一日 (新潮クレスト・ブックス)

ビリー・リンの永遠の一日 (新潮クレスト・ブックス)

『ビリー・リンの永遠の一日』という本。旦那が面白そうだよって教えてくれた。イラク戦争から一時帰国した兵士達の物語っていうのに、なんだか惹かれて読んでみた。あらすじはこんな感じ。

兵士の見た過酷な戦場と、祖国アメリカに溢れる愚かな狂騒。全米批評家協会賞受賞作。中東での戦闘を生き延び一時帰還した8人の兵士。彼らは戦意昂揚のための催しに駆り出され、巨大スタジアムで芸能人と並んでスポットライトを浴びる。時折甦る生々しい戦場の記憶と、政治やメディアの煽る滑稽な狂騒の、その途方もない隔絶。テロと戦争の絶えない21世紀のアメリカの姿を、19歳の兵士の視点で描く感動的長篇。

19歳のビリー・リンは、テキサスの田舎町出身。労働者階級のごく平凡な家庭に育ったんだけれど、高校卒業寸前に、姉を裏切った男の車をたたき壊して、訴追を免れるために軍隊に入ってイラク戦争に参加する。彼の所属する部隊は、イラクで敵からの攻撃に応戦したところをフォックスニュースが偶然映像にとらえて放映したため、母国で一躍有名になる。
ビリーは軍隊で出会った親友に、知的好奇心を刺激され、本を読むことの楽しみなどを教えてもらっていたんだけれど、その親友は戦闘で亡くなった。そんなビリーは、この一時帰国で、突然英雄視される事に違和感を感じていて。
彼らの見たアメリカ。この小説の中に描かれたアメリカが、まさにアメリカのリアルっていう気がした。今のアメリカのいろんな顔が、ビリー・リンの目を通して描かれている気がする。
軍人を「ヒーロー」と讃えるくせに、実際には教養のない使い捨ての道具程度にしか思っていない右翼の金持ちたちや、有名人としてもみくちゃにするけれども一方で軽視している一般人たちの態度。
貧富の差が大きくて、住む世界が違う感がものすごく強いんだなあ、、って思える。そんなアメリカがシニカルに描かれてて。健康を害したら、それまである程度裕福だったのが一気に破産してしまうとか。どうしようもなくて軍隊に入る若者達。戦場も地獄だけど、帰っても居場所があるのかな、、って不安に思っていたり。
9.11以降のアメリカをリアルに、シニカルな目線で描いている小説で、すごく面白かった。映画化もされてるみたいだけど、映画ではどんな感じになってるんだろうなあ。ちょっと映画もみてみたい気がした。