アントレとヨーロッパの宴会の歴史


フランス語では、入り口の意味のentrée(アントレ)が何故アメリカではメインディッシュのことを指すのか、、という疑問をこの前持って、私もちょっとだけ調べてみた。
辞書なんかを見ると、Yakuちゃんのコメント通り、「entrée」は本来は「正餐で魚料理とローストの間にに出す温かい肉料理」を指した、、というような説明がしてある。でも、なんで入り口なのに??という疑問が。
で、ちょうど旦那がヨーロッパ、特にフランスの宴会料理の歴史関係の資料を持っていたりするので、ちょこっと見せてもらった。
王室や貴族の権力を誇示するために、14世紀頃から宴会が盛んに開かれるようになったフランス。
中性社会では、サービスとサービスの間の談笑と余興の時間のことを「アントルメ(entremets)」と称していた。そのアントルメの豪華さは権力のバロメータでもあった。
14世紀あたりから、「アントルメ」の際、余興の一環として、通常食さない珍しい料理(塩味や甘みが強調された料理、様々な珍しい食材、砂糖やアーティチョーク等の野菜が使われ、また凝った細工をほどこしたお菓子)がふるまわれた。
その後、アントルメが振る舞われるのは、肉のローストがサービスされた後に固定され、ロティ(ローストの肉料理)の後に出す料理全体をアントルメと呼ぶようになったようだ。これが17世紀頃。

中世末期から近世にかけてのフランスの宴会料理、上流階級の食事の基本構造はこんな感じ。
ポタージュ→ロティ→アントルメ(野菜や砂糖菓子、パテ)→デザート(最後の食事、干した果物等)→ワイン(スパイス入りのドラジェとスパイス入りの甘いワイン、ポート等が消化を助ける)

19世紀以降になって、アントルメはデザートに吸収され、デザートは甘い菓子を意味するようになった。
19世紀以降の食事の構造は、今の私たちにもなじみの深い構造。
ポタージュ(アントレ)→ロティ(メイン)→デザート(アントルメ)→コーヒー(ワイン)。
ここで、なんとなく謎がちょっとわかったような。
食事と食事の間に供されたものって、そもそもはアントルメ(entremets)だったのね。entre mets なら、間に置くっていう意味だから、フランス語としても良く理解できる。
そのアントルメが、どこかの時点で、英語圏に行くときにアントレと入れ替わっちゃったのでは?

というところまで書いてみたんだけど、やっぱり他の資料を見ると、アントレは、肉料理の前に供されていた、という話も発見。う〜む。この場合、メインへの入り口という意味でのアントレなのかな。で、その肉料理の後がアントルメ?
時代時代によって違うみたいだし、やっぱり簡単に結論づけられなかった。

美味礼賛

美味礼賛

ちょっとこの本でも読んでみて、もう一回じっくり調べてみます。
ちなみに、今、アントルメは、丸いままでカットしていないホールケーキをそう呼ぶらしい。
時代によって言葉って変わるのね。