ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり」、最近夢中になって読んでいた本がこれ。めちゃめちゃ面白かった。これはフィクションではなく、本当の話、ドキュメンタリー。ニュートンのことなんて、“万有引力を発見した人”としてしか知らなかったんだけど、知れば知るほど面白い、ニュートン。すごい人だったんだなあ、、としみじみ。(以下、本の内容について一部ネタバレあり)
本の内容は、簡単に言うとこんな感じ。(amazonの紹介文)

欧州最高の知性 vs. 英国最悪の知能犯
万有引力を発見し、近代物理学に巨大な足跡を残した天才科学者ニュートン
後年は王立造幣局に長官として迎えられ、イギリスの貨幣政策に多大な貢献をしたことが知られていますが、それと同じ時期に、ある一人の贋金づくりと熾烈な頭脳戦を繰り広げていたことは、これまでほとんど語られてきませんでした。
その贋金づくりの名は、ウィリアム・チャロナー。イギリス史上類を見ない巨額の贋金事件の首謀者です。
本書は、膨大な資料と綿密な分析をもとに、ニュートンの捜査官としての知られざる一面に初めてスポットを当て、事件解決にいたる攻防をスリリングに描いたノンフィクションです。

前半部分は、結構丁寧にニュートンの生い立ちから、大学人としての研究生活の事が描かれている。ニュートンって本当に研究一筋の偉大な科学者だったんだなあ。それこそ、思いついたらどこでも数式を書いちゃうくらいだったみたいで、、ガリレオ湯川准教授は、ニュートンの真似なのかな?とにかく、彼は寝食を忘れて研究に没頭するタイプで、妻子もなく、ずっと大学で研究&勉強し続けいていたみたい。人付き合いも、自分が相手に知性を認めた、ごく一部の知識人とだけ、みたいで。大学での講義は、学生に意味がわからないような難しい話をぼそぼそ話し続けていたから、学生の人気はなかったようで。ニュートンってこんなタイプの研究者だったのかな??と思い描くといろいろ興味深いし、面白い。
万有引力を発見して、それをしるした名著“プリンキピア”をまとめた後は、少し精神的に参ったり、大学の仕事で出て行った大都会ロンドンの魅力に惹かれたりしたようだ。今後自分は、プリンキビア以上の研究成果をあげられない、、って思ったのかなあ。ある時すっぱり大学の仕事をやめて、王立造幣局の監事になるニュートン。そこからが後半部分。
でも、この人、やっぱり頭がすご〜くとんでもなくいい人だったんだなあ、、と思う。この仕事の話がきた時は、そもそも事務所に何度か顔を出せば、それなりのお給料がもらえる名誉職?みたいな話だったみたいなのに。時は折しも、戦費がかさんで財政破綻に陥りそうだったイギリス。縁故でポストを得て、部下に仕事をまかせっきり、な〜んにも仕事をしないその時の造幣局長官の無能っぷりに業を煮やしたのか、ニュートンはさまざまな対策を打ち出した。いきなり造幣局の全システムを改革し、硬貨の改鋳にとどまらず事実上の紙幣発行を軌道に乗せ、ついに金本位制への転換も視野に入れていく。役人の生産性アップや、綱紀粛正まで行うし。すごいわ、ニュートン。今まで畑違いの分野にいたのに、この人事務能力も半端じゃなかったのね〜。頭のいい人が本気出したら、どこでもすごい仕事をやってのけられる、、という事だろうか。
そして、その造幣局の監事として、もうひとつ取り組まねばならなかったのが、贋金作りとの対決。なにしろ、ニュートンが着任したばかりの時は、流通してる通貨の10パーセントが贋金っていうようなとんでもない状況で。このままではどうしようもないと、立ち上がらざるを得なかったニュートン。本当は、捜査とかやりたくなかったみたいなのに、やりだしたらすごい厳しさでどんどん検挙摘発していったみたい。で、使えそうな罪人を手下にして、密偵にするとか。まるでロンドンの鬼平やん!
そこで、対決するのは、贋金作りのボス、チャロナー。こいつがもう、稀代の詐欺師。口がうまいし、言い逃れすごいの。議会まで乗り込んでいって、自分に貨幣の改鋳を任せてくれたら、贋金なんて作れないようにすごい貨幣を造っちゃうぞ〜って演説しちゃって、ある程度の人を納得させる力があるんだから。すごい。口八丁なのよね。で、しっぽをつかまれないように、うまく立ち回って、証拠を握らせない。この時代の英国。もう大陪審がいて、ちゃんと裁判をするんだねえ。拷問とか、すでにあり得ない時代になってたみたいで。日本でいうと江戸時代初期なんだけど、すごいな。進んでるわ。まあ、看守が囚人を虐待したり、取調官が容疑者に高圧的取り調べをして脅迫する、、とか、そういう事はあるけど。一応、ちゃんと裁判で陪審が納得できるような証拠をそろえないと有罪にできないってのが、やっぱり進んでるな、英国。って思った。ま、だから口先でなんぼでも言い逃れするチャロナーみたいな悪党が跋扈しちゃうんだけどね。そんな超悪党で詐欺師なチャロナーと、頭脳で対決するニュートンの執念がすごい。いやほんと、面白い。事実は小説よりも奇なりっていうけど、ほんまやね。歴史好きな人、ミステリー好きな方、この本はとっても面白いと思います。ま、ノンフィクションなので、すごいトリックが〜!とか、そういうのはありませんが、結構面白くてはまると思います。おすすめ。しかし、こういう本こそ電子書籍にしてほしいなあ。