アルキメデスは手を汚さない

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

前に、日記に星新一のことを書いた時、三度のメシさんがコメントで、「私はその頃星新一より小峰元にはまっていたかも。」と書いておられた。小峰元?誰だっけ、、と思った私とは違って、旦那はもちろんその時大流行した小峰元を知っていて、ちょうど復刊した文庫本を買ってきてくれた。それが、この『アルキメデスは手を汚さない』。
この作品は、1973年の江戸川乱歩賞を受賞して、発売されるや大ヒットした作品。
舞台は、1970年代の豊中の高校。1970年代が舞台ということもあって、なんだか最初、「やっぱり古い〜!」とちょっと違和感を持った。出てくる言葉がなんか時代を感じさせるのだ。エコノミックアニマルとか、赤軍派とか、、今は全然お目にかからない言葉達。
まだ戦後の匂いが残ってる??なんて思いつつ、でも読み進むとさすがに面白くてどんどん引きつけられた。最初は表面的に言葉が古いかな、なんて思ったけれど、高校生くらいの感性や、小生意気なところ、何があっても友人同士守りあおうとするところ、大人とはちょっと違う価値観を持っているところ、、そういったことは、今も昔もそんなに変わらないんじゃないかな、と思った。だから、物語の肝の部分は全然古くさくないし、とっても面白い。さすが、大ヒットしたのもうなずけるなあ。
本の帯に、「この小説との出会いが、本嫌いだったバカ高校生の運命を変えた」と、今をときめく東野圭吾がメッセージを書いている。なんだか彼が好きだったのもわかるな。
ちょうど物語の舞台が、豊中市、というとっても私にはなじみの深い場所だったのも、よけいに面白かった。琵琶湖とか須磨とか、出てくる地名がよくわかるし、距離感もわかる。
6階建てのマンション建設で、近所の住民が日照権について大騒ぎしているのは、ちょっと隔世の感だけれど、、。うちの近所のマンションなんて、50階建てだもんなあ。私の住んでるマンションも35階建てだし。
私と同年代の人で、この本を読み損なっている人には、とってもおすすめ。今の若い人にも、できれば読んで感想を聞きたいなあ、、なんて思ったりした。