深い疵

深い疵 (創元推理文庫)

深い疵 (創元推理文庫)

この前読んだ『悪女は自殺しない』がとても面白かったので、その続編を読んでみることに。オリヴァー&ピアシリーズの第三弾。内容はこんな感じ。

ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第二次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチス武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第二、第三の殺人が発生。被害者の過去を探り、犯行に及んだのは何者なのか。複雑な構成&誰もが嘘をついている&著者が仕掛けたミスリードの罠。ドイツでシリーズ累計200万部突破、破格の警察小説。

いやあ、、これ、すごく面白かった。訳者の酒寄進一さんが、シリーズ物の第三作めのこれを一番先に訳したのもわかるわ。元ナチの武装親衛隊員が身分を偽ってユダヤ人に化けてるとか、ドイツの第二次大戦時の暗い過去が出てくるけれど、普通にミステリーの謎解きとしてとても面白い。オリヴァーとピアのコンビが、とても良いキャラだし、読んでいて楽しめる。
第二次世界大戦の時に、ドイツが敗戦して、現在のポーランドの中のドイツ領だった場所から、慌てて引き揚げる時の話が出てくるんだけれど、それを読んでいて、ふと私がドイツに住んでいた頃のアパートの隣人の事を思い出した。そこに住んでおられた老夫婦は、ちょうど第二次大戦の時に、やっぱりポーランドのドイツ領から引き揚げてきて、すごく大変だった、と思い出話をされていた。日本人が満州から引き揚げてきた時のような大変さがあったのかなあ、、ってその話を聞いた時もいろいろ思ったんだけど。私の母も中国から引き揚げてくる時はすごく大変だったらしいので。そんな昔の事にも思いをはせたり。いろいろな意味で面白い作品だった。
たとえ50年たっても60年たっても、人間の恨みってそう簡単に忘れられるものではないのかも。と思うといろいろ重いなあ。いろいろ考えさせられる作品だけど、重すぎる作品というわけでもなく。これ、ドラマにしたら面白そう、って思った。やはりオリヴァー&ピアシリーズは面白い!日本語に訳されているのは、あと第四弾の『白雪姫には死んでもらう』なんだけど、そっちも読みたいな。そして、第二弾と第五弾も早く翻訳されますように。